華やかなステージ、スポットライト、喝采──。
そんな世界へ自分を導いてくれると信じた“1人の男”がいた。
「ジャニーズJr.出身」「亀梨和也の同期」「NEWSのメンバーとしてデビュー寸前まで行った」
これだけ聞けば、誰もが「本物だ」と信じてしまうだろう。
しかし、その輝く肩書は砂の城のように脆く、指先で触れた瞬間に崩れ落ちる幻だった。
なぜ人は彼を信じてしまったのか?
そして彼は何者だったのか?
本記事では、被害者たちの声と取材結果をもとに、
“元ジャニーズを名乗った謎の男・X氏”の正体に迫る。
読み進めるほどに浮かび上がるのは、虚構と現実が入り混じる“人間の闇”だ。
元ジャニーズという肩書きの崩壊──全経歴が「公式に否定された」衝撃
X氏が堂々と語っていた過去は、驚くほど華やかだった。
ジャニーズJr.で活動し、同期は人気タレント。
デビュー直前まで企画が進んでいたという話まで出てくる。
しかし、取材陣が確認を進めるほど、その経歴は次々と“存在しないもの”だと判明していった。
● 公式事務所:在籍歴ゼロ
事務所側は「該当する人物は存在しない」と即答。
必要以上に取り合われることすらなかったほど、彼の名は登録されていない。
● 知人を名乗った芸能人側:面識ゼロ
X氏が関係者を装った元タレントの側も「その人物は知らない」とキッパリ。
これにより、X氏の語った“つながり”は完全に崩壊した。
● 経歴の整合性:ほぼ全滅
デビュー話の時系列、在籍したとされるユニット名、当時のダンスレッスンの話…
細部を掘り下げるほど矛盾が露呈し、“実在しえない人物像”として輪郭が浮かび上がっていく。
つまり、
X氏は「元ジャニーズ」という虚構のキャラクターを演じていたに過ぎない。
華やかな経歴は、被害者を信じさせるための完璧な“仮面”だったのである。
誰もが騙された“本物らしさ”──X氏が仕掛けた心理トリック
「経歴がウソなら、どこで信じてしまったのか」
ここが最大の疑問だろう。
だが、X氏には“信じさせるための準備”が徹底されていた。
まるで舞台のセットのように、細やかに、巧妙に。
● 実在の芸能プロダクションへ同行
最も強烈な“リアル”を演出したのがこれ。
実在する芸能プロのオフィスに一緒に行き、代表者まで紹介する。
一般人からすれば、この行動だけで“確かな裏付け”に見えてしまう。
「本当に芸能界の人なんだ」
そう思ってしまうのは当然だ。
● 業界の裏話を滑らかに語る演技力
ジャニーズ内部の噂、レッスンの裏側、デビューのプロセス…
細かすぎる設定、リアリティのある言い回し、矛盾のない即答──
すべてが「本物らしさ」を演出する材料になった。
まるで長年その世界にいたかのような話術。
これが被害者の警戒心を確実に溶かしていく。
● 有名タレントの名前を自然なトーンで使う
本当に知り合いでなければ出せない“空気感”。
「同期だったんだよ、あいつとは気が合った」
そんな日常会話のような言葉が、信頼を少しずつ積み重ねていく。
X氏は、嘘を嘘に見せない“演出力”に長けていた。
芸能界を生きてきた人間を模倣する能力は、もはや職人の域だったと言っていい。
奪ったのは金だけじゃない──X氏が向けた三つの刃
被害者の証言が重なるたび、X氏の悪質性は一層深くなる。
彼の目的はひとつではない。
三方向から人を追い込み、奪い、壊していく構造が見えてくる。
● ①「買取料」名目で高額を搾取
アニメ出演、人気ゲームの声優、企業CMのナレーション…
聞くだけで胸が躍るような仕事を次々提示し、
その裏で「仕事を受けるには買取料が必要だ」と説明する。
金額はどれも100万円単位。
なかには総額4200万円を超える被害も確認されている。
夢をつかむチャンスが目の前にある──
その錯覚が、財布の紐を緩めてしまった。
● ② 心理的支配
褒め言葉、期待、特別扱い。
一見すると優しい言葉が、実は依存への第一歩となる。
「あなたなら必ず売れる」
「こんな逸材は見たことがない」
才能を持つ人ほど、こうした言葉は胸に刺さる。
X氏はその“心の隙間”を巧みに見抜き、支配していった。
● ③ 性的加害
ここからはさらに重い。
20代女性の証言によると、「モデルとして成功させる」という名目で呼び出し、
半裸状態での撮影や、無断で身体に触れる行為を繰り返した。
「施術」「素材撮影」
こう言われれば、芸能の仕事と思ってしまう人は多い。
その心理を悪用して、尊厳を踏みにじったのだ。
X氏は金だけでなく、人の心と身体までも利用した。
だからこそ被害の深刻さは計り知れない。
X氏の正体とは?──人物像から見える“虚像の中の実像”
では、X氏の“正体”は本当のところ何なのか?
当然ながら、実在の人物名を特定できる情報は報道にも存在しない。
しかし、行動と証言の積み重ねから、彼の“人物像”はかなり鮮明になってくる。
● 芸能業界に近い場所で生きてきた可能性
内部構造や流れを熟知していたことから、
完全な素人だったとは考えにくい。
業界の周縁、関係者の周り、仕事に関わった経験があったのかもしれない。
● 対人操作に長けた人間
被害者が口を揃えて語るのは「話が異様に上手かった」という点。
質問への即答、相手の不安を察して寄り添う態度、言葉選びの巧さ──
これは生まれつきの才能か、長年培った技術か。
どちらにせよ、人を操る能力は突出していた。
● 大胆かつ行動力が異常に高い
芸能プロへの同行、プロデューサー紹介、公開の場での接触…
普通の詐欺師なら躊躇する場面で、堂々と行動している。
これは“自信”ではなく、“狂気”に近い。
つまり、
X氏は「元ジャニーズのフリをした別人」であり、
芸能界で生きてきた人物を巧みに模写していた“虚構の住人”である。
その正体は不明だが、虚構を現実として生きるプロフェッショナルだった。
結論:X氏は“元ジャニーズ”ではなく、夢と心を食い物にする詐欺師だった
スポットライトを浴びたことも、ステージに立ったことも、おそらくない。
しかし、彼は“芸能人という虚像”を利用し、何人もの人生に深い傷を残した。
- 嘘の経歴で信頼を奪い
- 心を支配し
- 高額の金を巻き上げ
- そして身体まで奪う
その振る舞いは、芸能人でもプロデューサーでもなく、
ただの“夢泥棒”でしかなかった。
華やかな世界への憧れを利用して人を操る──
その冷酷さこそが、X氏の唯一の“本当の顔”だったのだ。
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